10月23日(水)、酒田市公益研修センター中研修室1にて「歴史的街並みを未来へ繋ぐ―成功事例で見る保全の実践」を開催し、本学学生と教職員、一般市民の方を合わせて17名が参加しました。講師として本学の張紅助教(観光?まちづくりコース)が登壇し、歴史的街並み保全についての研究を始めたきっかけ、福島県にある大内宿の景観の変化?保全の過程?住民の意思決定などについて講演しました。
張助教は現職までの経歴を紹介し、「歴史的街並み保全についての研究を始めたきっかけは、歴史的街並みや建物が元々好きだったから。色々と見て回った結果、焼き物の街として有名な自分のふるさと『陳炉古鎮』には特殊な景観があることに気付いた」と話しました。
大内宿について、「江戸時代は半農半宿を生業としていた。明治時代初期に街の衰退と大内ダム?大川ダムの建設が重なり、ダム事業に伴う用地買収や工事費で豊かになったこと、防火、補助金の交付、維持費などの理由から茅葺き屋根を茅葺きトタン被覆などに改変する住民がいた」と話しました。
大内宿の保全活動開始は「当時学部生だった相沢韶男氏が1967年に大内宿を発見し、1969年に学術界に保全を訴えたことがきっかけ。当初は保全が進まず、『重要伝統的建造物群保存地区制度』の申請を住民が拒否していた。その後、1978年の新町長が『観光業の資源として保全しよう』と声を上げたことで、1981年重要伝統的建造物群保存地区制度に選定され、大内宿保存会が成立された」とし、「街並み保全に尽力した住民がいたことや少しずつ観光客が増えていったことから、1994~2000年代前半、茅葺き屋根に復原する動きが強まった」と説明しました。
最後に「住民向けに実施したアンケートでは、保全活動を通して地域アイデンティティが強くなったという回答が多くあった。時代の変化と共に住民のライフスタイルも変わっていくため、昔のままの完全な保全は難しいが、大内宿を後世に残すためにも研究を続けていきたい」と想いを語っていました。
参加者からは、「一度改変された景観が、まちづくりや観光業の影響で戻ったという点がとても面白いと感じた」「山間地域で生業が成り立ち、街並みが残っている大内宿は大変興味深かった」「ぜひ一度大内宿に行ってみたいと思った」「先生の研究内容を詳しく知ることができて、大変貴重な機会だった」などの感想が寄せられました。
本学図書館にて、張助教が監修した「時を超えて守り続ける街並み―日本と中国の保全の現場に迫る」を2024年12月末まで展示しておりますので、ぜひお越しください。
地域共創センターでは、学生や教員が話題提供者となって開催する小規模で双方向形式の教養講座(共創カフェ)や、センターが企画?運営する公開講座(FORUM21)を学内外の講師による幅広いテーマで開催してまいります。開催については、本学ホームページや地域共創センターSNS(Instagram、Facebook)でお知らせいたします。